2014年2月5日水曜日

新春講演会「環境革命と国づくり,人づくり」涌井雅之さん,東京都市大学教授


2014.1.29

霞が関ビル35階

涌井雅之先生ご講演メモ

日本専門新聞協会主催平成26年 新春講演会「環境革命と国づくり,人づくり」

・  ある中小企業の経営者は,これからは3割安くするか、3倍技術力を上げるしかないとおっしゃっていた.

・  「吾唯足知(われ ただ たるを しる)」と京都,竜安寺石庭の北庭(非公開)にある水壺(蹲:つくばい)に刻まれている.

・  「不安な時代の価値観マーケティング-旅行編」(富士通総研)では,アンケート結果をもとに「つながり志向」「安らぎ・癒し志向」「すごもり志向」などの生活者の価値観変化を抽出して,各タイプをツバメ、コウモリ、タカ、フクロウと命名し,巣篭り志向が増えていると分析している.

・  ブータン王国は国家の指標として,GNH(国民総幸福量)を打ち出している.

・  ケンペル(ドイツ人医師)が幕末の日本を訪れて,貧乏であっても,それを苦にしない姿に感動したと,エリザベス女王が1975年の来日時晩餐会で紹介した.

・  「ルビンの壷」は向いあった人の顔にも見えるが,見えないものを見出すことが大切である.人はどうしても既往の概念に染まりやすいので,発想の転換が大事である.

・  産業革命後の世界は「成長」が基盤であったが,環境革命後の世界は,「成熟」が社会基盤である.環境革命は,インフラに自然を取り入れることである.そして地縁結合型社会に転換し,自立することである.

・  かつての「まちづくり」より「まちおこし」が重要となる.

・  日本は世界でも美しい景色がある.それには理由がある.厳しい自然との共生が美しい景色を生むのである.

・  西欧は城壁で生活空間を切り分け,外側に墓地を作った.

・  一方,日本は江戸で代表されるように,「大家は長屋の糞で餅をつく」(「店中の尻で大家は餅をつき」)の糞尿のリサイクルや悉皆屋(修理屋)という商売も成り立っていたほどリサイクルが盛んであった..

・  西欧に対して,日本の城の外は「里山」である.

・  日本の自然の扱いが難しい。海流、脊梁山脈、川の勾配は急流で滝のようである.世界の0.25%の領土にM6以上の地震の2割が起こる.日本に住む日本人は,美人の妻(日本の自然は,美しく怖い)を貰った亭主に例えられる.

・  日本には「いなす」知恵,レジリエンスな知恵がある.これを活かすべきである.

・  東京タワーは剛な構造に対して,スカイツリーは柔な構造で日本の塔の建築技法を応用している.両者は対照的である.

・  「大宝律令」をつくった藤原不比等は,行政界を流域界で分けた.

・  日本の里山システムは,「奥山」には手を入れない.

・  奥山,里山につづき,野辺,川辺,浜辺がある.

・  奥出雲のたたら製鉄における鉄穴流しでは,里山の丘陵を切崩し,美しい棚田ができた.これは文化景観のひとつである.

・  塩田が盛んだった地域では,燃料としての松を海岸に植えて,松木山という文化景観をつくった.

・  雪国にはブナ林の里山があり,薪の提供,水源林として機能している.

・  自然からの恵みは「利息」のようなものである.「元金」の自然は復元され続ける.日本がCOPで提唱したSATOYAMAに,発展途上国が賛同し,日本を支持してくれた.

・  東北の海岸には海岸砂丘が発達し,その背後は湿地となっている.砂は強風で瞬く間に移動し,田畑が覆われてしまう.これを防ぐために,海岸防災林を育てた.

・  武田信玄は,「聖牛」や「(棒)ダシ」などの水制工を立案・構築し,暴れ川を制御した.

・  加藤清正は,水路の底に穴をいくつか掘って,水が渦をおこさせ,含まれる火山灰土(ヨナ)が水路底にたまらない工夫をした.

・  日本は「花鳥風月」の国である.

・  災害に対しては,「緩和」と「適応」という対応策に区分される.

・  現代では,世界の約6割の人口が都市に暮らしている.

・  日本人は「緑(みどり)」があって当たり前と思ってきた。

・  敗戦後のシャウプ勧告によって,日本は道路を作り出した.

・  都市化に伴い「緑(みどり)」は減少してきた.

・  今世界はモーダルシフトの潮流にあり,都市の自動車を排除しようとしている。

・  都市はコンパクトにして,「緑(みどり)」を増やす「コンパクトシティー」構想が大事になる.

・  東京はコンパクト化を目指している.それが現れたのが東京オリンピックである.

・  レガシープランが大事である.オリンピック後に何を遺すのかという視点が重要である.(ロンドンはオリンピックの後に世界一住みやすい都市に変貌した)

・  自然資本を重視することが大事である.たとえばパリ市内には,プジョーのレンタルサイクルが300箇所以上整備されている.

・  アメリカのウエストサイド地区の再活性化では,市民の運動が引き込み貨物線の高架を「緑のハイライン」によみがえらせた.

・  韓国ソウルでは,前大統領の主導で高速道路を取り壊し,本来の川を復元した.

・  涌井氏が手掛けた渋谷の大橋ジャンクションは,道路に屋根をかけ,「天空の庭 」をつくり,市民にやすらぎ空間を提供して,JHの企業イメージを一新させた.

・  森ビルは,「生物多様性配慮型ビル」を提供している.これらは,「環境不動産価値」に結びつく.

・  朽ちるインフラをどうするか考えて,(涌井氏が)東急と森ビルを引き合わせ「多摩田園都市22世紀ビル構想」を起こした.

・  これからのインフラは「夢を創る」ことが大事である.「りんご形の国土計画」から「ぶどう型の国土計画」への転換が求められる.

・  「エネルギー」「情報」「アクセス」「エコロジー」が「ぶどうの実」であり,国家の軸は「ふどうの茎」にあたる.

・  五木寛之著「下山の思想」(玄冬舎新書)の「下山」とは,成長期に対する成熟期を指している.

・  これからは,日本も世界も「自然の力を借りたグリーンインフラ」を整備していく必要がある.

以上(高橋一紀 2014.2.5記)

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